看護師のなかには、家庭と仕事を両立しながらお給料を稼ぎたいと考える方も多くいらっしゃるかと思います。
シングルマザーの看護師は、特に給与額は重要になってきます。
基本的に看護師が家庭と両立しやすい職場は両立がしにくい職場と比べると、給与水準が低い傾向があります。
お金を稼ぎたい場合は残業・ 業務量が多いなどの忙しい職場で働かなくてはいけません。
体力的にも精神的にも大変ですが、家族に協力してもらったり職場に頼んで子どもが小さいうちだけ残業の少ない部署に異動させてもらったりしながら、そのような職場でなんとか家庭と両立している看護師もいます。
ただ、それは簡単なことではないですよね。
「無理なく家庭と両立したい」という看護師は多いです。
ここでは、「看護師が家庭と両立しやすい職場」のお給料の水準についてお話していきます。

※筆者が想定する参考イメージとなります。事業所によって給与水準は異なりますのでご了承ください。

大手看護師転職エージェントの元キャリアアドバイザー&新人育成担当。
約6年間、20代の若手看護師から60歳以上の定年退職後の看護師までを年齢問わずサポート。
担当エリアは首都圏から北海道や沖縄などの地方まで幅広く経験。
キャリアアドバイザー時代の累計転職相談人数は2,000人以上。
お給料を重視したい看護師向けにおすすめの働き方
夜勤がある職場やオンコールがある職場
基本的には夜勤がある職場は給与が高く、日勤のみの職場は安い傾向があります。
給与は同じような病院でも法人によって大きくことなりますが、夜勤がある職場は夜勤手当がつきますよね。
2交代制であれば、8,000円~15,000円程度の夜勤手当がつくことが多いため、月に4回夜勤に入れば32,000円~60,000円が基本給に追加されます。
これはかなり大きいといえます。
また、手術室・有料老人ホーム・特別養護老人ホーム・訪問看護ステーションはオンコール手当として一回数千円×月に数回の手当が発生します。
透析室は夜勤手当はないですが、透析室は透析手当という手当が月に数万円ついていたり準夜勤や早番遅番手当が多く、夜勤がなくてもお給料は高くなりがちです。
※職場によって異なります。必ず手当がつくというわけではありません。
一方で、日勤のみの職場は給与水準が低くなる傾向にあります。
月の給与の内訳が基本給と看護手当のみの場合が多いため月給が安くなりがちです。
急性期の度合が高い職場や重症度が高い職場
病院と介護施設を比べると、看護師の場合は病院のほうが給与が高いのが特徴です。
病院のなかでも、療養型病院や精神科病院などの慢性期の病院よりは緊急度が高い急性期病院のほうが高くなりやすいです。
また、介護施設同士で比較をすると医療度や介護度が高いところ(重症度が高い職場)が給与が高くなりやすいです。
例えば、訪問看護ステーションの中でもターミナル期の方を受け入れているステーションは大変であることが多いので、受け入れを行っていないステーションよりは給与が高いところが多かったり、有料老人ホームでも看取りを行っていたり、透析が必要な方の受け入れを行っている職場は看護師の給与が高い場合があります。
そのため、クリニック(外来)やデイサービス、保育園などは比較的看護師の給与水準が低くなってしまうことが多いです。
看護師(30代後半):急性期病院→訪問看護ステーション→精神科病院
もともと急性期の病院で働いていて、子育てを気に日勤のみの仕事にシフトしたいと思って土日休みの訪問看護ステーションに転職しました。
残業もあまりないし、休みの融通も効き所長も女性だったこともあって、子育て理解もある職場だったので不満はありませんでした。
ただ、夜勤のある生活になれてしまっていたので日勤で5連勤がしんどくてしんどくて…。
急性期の夜勤は大変だったので日勤になればラクだと思ったのですが、意外にそうでもなかったです。
しかも給料も下がってしまって、「これなら夜勤があるほうが良い!」と思って主人と両親に相談して転職することにしました。
今は精神科に勤めていますが、「残業はなし」「休みも取りやすい」「金曜に夜勤がある日は土日は休み」みたいなものなので、結構満足しています!
急性期ほどお給料はないですが、まぁ…残業がないことを考えると十分な額ですね。
M・N(元看護師キャリアアドバイザー)
看護師が「家庭と両立」というと、どうしても「日勤のみで働く」という選択肢が真っ先に出てきますよね。
筆者も面談をしていて、約7割くらいの看護師さんが日勤のみの働き方を希望されていたように思います。
しかし面談をしてみると、その半分くらいが「べつに日勤じゃなくても大丈夫かもしれない」となるケースも多かったです。
お子さんの学費がかかる時期や、シングルマザーの看護師はある程度お給料が必要になりますよね。
その場合は「夜勤やオンコールは無理!」と諦めてしまうのではなくて、「どのくらいだったらできるのか?」という視点で考えてみると良いと思います。
お給料よりも時間を大事にしたい人におすすめの働き方
日勤のみの職場
面談をしていると
「看護師の仕事は続けたいけど、お給料よりは家族や自分の時間を重視したい」
という看護師もたくさんいました。
その場合、日勤のみの仕事を選ぶといいでしょう。
夜勤やオンコールがある職場はどうしても生活が不規則になり、土日が休日のご家族とはすれ違い生活になってしまいます。
外来のみのクリニックやデイサービスは日勤のみで働くことができ、日曜が休日のところもたくさんあります。
ただ、看護師が働く職場の中では基本的にはお給料は低い傾向はあります。
別のデメリットもあります。
クリニックの外来やデイサービスは看護師の在籍数が少ないので、求人が出ていてもすぐに埋まってしまうことです。
また、人数がそれほど必要ないため、正職員ではなくパートを募集していることもあり、クリニックの外来やデイサービスの正職員求人は貴重でいつでも募集が出ているものは少ないのが特徴。
まれに、訪問看護ステーションや有料老人ホームなどでオンコールができなくても応募ができる求人もありますので、日勤のみを希望する場合でも日勤求人は幅広くみておくのがおすすめです。
子どもが小さいうちはパートで働く
看護師とてして日勤かつ正職員で働きたいけど「条件にあった職場が見つからない」「外来やデイサービスよりは病棟で働きたい」という場合は、パートで働くという選択肢を考えてみるのもありです。
筆者が病院の採用担当者と話していると、病院で一番採用したいのは「夜勤ができる看護師」と答えられることが多いです。
また、病棟配属の看護師で正職員かつ日勤のみの働き方をしていいと許可を出すと、夜勤をしている看護師から「不平等だ」「しなくていいなら私もやりたくない」という声が上がり、職場の雰囲気が悪くなってしまうことを避けたいという背景などがあります。
そのため、病棟で日勤で働く場合はパート採用という病院も中にはあります。
これは病院だけではなく、訪問看護ステーションでも同じです。
オンコールができない場合はパート採用、というところもあります。
また、上で述べたクリニックの外来やデイサービスもパート採用の枠は空いている可能性があります。
パートという働き方となると、時給で働くことになるため、フルタイムで働いたとしてもクリニックの外来やデイサービスの正職員よりは安くなってしまいますが、その分、時間を確保することはできます。
お給料を重視しない場合は、おすすめの働き方の1つです。
看護師(40代前半):総合病院(病棟)→デイサービス(パート)→療養型病院(病棟)
私は妊娠・出産のタイミングで総合病院を退職しました。
少し子育てが落ち着いた時に復職しようと思って就職活動をしたのですが、「お子様の体調により突発的に休まれると困る」、「時間に制限があると厳しい」など、色々言われて全然正職員の仕事が見つかりませんでした。
でも、家の近くのデイサービスでたまたまパート求人を見つけたんですよね。
主人は「働かなくてもいい」と言っていたのですが、専業主婦よりはちょっとでも働いていたほうがお小遣い稼ぎにもなるしいいかなと思って就職しました。
ちょっと物足りなかったけど、家庭もおろそかにしなくて済んだし子どもが手を離れた時にもう一度病院で働きたいと思っていたので、その就職活動の際にブランク扱いされることもなかったので、結果的によかったかなと思っています。
今は子育てが落ち着いたので、療養型病院で夜勤もしながら働いています。
M・N(元看護師キャリアアドバイザー)
「特に働かなくても経済的に支障がない」という場合は、無理に夜勤をしたりオンコールをしたりしてまで働く必要はないですし、家庭に専念する選択肢も良いと思います。
ただ、将来的に「正職員として働きたいと思っている」「子どもが手を離れたらまた病棟で働きたい」「お子さんが3人いて、数年後かなりの学費がかかることが予想される」という場合にはパートでもいいし、介護施設でも保育園でもいいので看護師としてどこかで少しでも働いておくのがおすすめです。
何もしないまま5年、10年とブランクが空いてしまうと、復帰する際の書類選考通過率が下がってしまうので注意が必要です。
「家庭との両立」にまつわる看護師の裏話
看護師が家庭と両立しようとするのは自分のためでもあり、家族のためでもありますよね。
筆者も2,000人以上の看護師さんと面談をしてきて、
「昔から憧れていた看護師になることができて、仕事を頑張りたい!」
と思う一方で、
「家族との時間も大切にしたい」
「子どもと一緒にいてあげたい」
という気持ちもあり、どうしたらいいのか戸惑ってしまう看護師たくさんいました。
しかし、ここで誤った選択をしてしまうと、あなたの人生に大きな影響を与えてしまいます。
ここでは筆者が実際に出会った看護師の失敗談をお話します。
CASE1:亭主関白な旦那さんに「家庭に入ってほしい」と言われ退職し、ブランク20年。「あの時、仕事を続けていれば…と後悔することがあります。」
准看護師(43歳):リハビリ特化型デイサービス勤務
私は最近、看護師の仕事に復帰したのですが就職にかなり苦戦しました。
なぜなら私の年齢は40歳を超えていますが、看護師経験が3年もないんです。
准看学校を卒業した後、内科病棟に2年半ほど勤めて結婚したんです。
そして、すぐに子どもができたので主人に「仕事を辞めて家庭に入ってほしい」と言われて退職しました。
当時は看護師の仕事が好きで続けたいと思っていたのですが、主人が「子育ては母親がするものだ」と言われたこともあり、自分の収入もさほど高くなかったので、”もっと働きたい”という気持ちを伝えることができませんでした。
子育てに専念して子どもの傍で成長を見ることができたのはよかったですが、正直、主人を説得してパートでもいいから家庭と両立しながら仕事をしておけばよかったと思っています。
M・N(元看護師キャリアアドバイザー)
それはどうしてですか?
准看護師(43歳):リハビリ特化型デイサービス勤務
今回の就職では、はっきりいって今の職場以外は不採用でした。
書類選考すら通らなかったところもたくさんあって。
「20年もブランクあったら注射はできないよね?」「電子カルテの経験がないとなぁ」「夜勤やります、と言ってくれるのは嬉しいんだけど、たぶん無理じゃないかなぁ」というようなことを言われたりしたんですよね。
やっぱりブランクがあると使いものにならないと思われてしまうのかなと。
M・N(元看護師キャリアアドバイザー)
あ~、たしかに。病院や医療度の高い施設に看護師さんを推薦する時、採血・点滴・注射などの手技がどのくらいできるかなどは聞かれることがありますね。
ブランクがあっても現場に教えらえる看護師さんがいれば書類選考に通ることもあるのですが、そもそも人員が不足しているところだったりするとそんな余裕も無いので「即戦力の看護師が欲しいので」と言われ書類選考で不採用になるケースもありましたね。
准看護師(43歳):リハビリ特化型デイサービス勤務
そうなんですね。
あと「うちは正看護師のみを募集しているんだよね」と言われて応募ができなかったところも多かったです。
准看護師は不利なんですかね…。
M・N(元看護師キャリアアドバイザー)
准看護師さんの場合、おっしゃる通りで正看護師さんに比べると選択肢が狭くなってしまう可能性はあるかと思います。
その病院や施設の形態によって「正看護師を〇名配置しましょう」という基準があるので、その基準を満たしたいために募集をしている職場ですと正看護師のみの募集枠になってしまうことも多いですかね。
准看護師(43歳):リハビリ特化型デイサービス勤務
なるほど…。私は本当は病院で働きたかったんですよね。
自分がまた病棟で患者さんと接したいというものありますが、ちょうど子どもが進学するということもあってお金もかかるんです。
今の職場は、こんな私でも採用してくださって感謝しているので悪く言うつもりはないのですが、その…お給料が安くて。
結婚や出産後も働いていた看護学校時代の同期はまだ病院で勤務しているのですが、年収で100万円ほど差があるんです。
途中で正看護師免許を取得した友人は、もっともらっていますし…。
当時は将来のことを何も考えずに専業主婦になりましたが、こんなに差が出るならちょっとでも働いておけばよかったと思うんです。
少し後悔しています。
M・N(元看護師キャリアアドバイザー)
そうだったんですか…。
看護師さんのお給料って「経験給」を採用されている職場が多いですよね。
つまり「看護師として何年働いているか」が基本給の算出基準になっている、ということです。
Aさんの場合は看護師経験が2年半なので、2年目の准看護師さんと同水準くらいになりやすいですね…。
ご友人はブランクなしで働いているのであれば、経験給も年々上がっているのではないかと思います。
さらに正看護師になると准看護師に比べ月収の基本給が上がるので、もう少し高いでしょうね…。
准看護師(43歳):リハビリ特化型デイサービス勤務
ですよね…。そんなことになるとは知らなかったんですよね。
ここだけの話、主人には「看護師なんだからどこでも受かるだろ」とか「意外と給料安いな」と言われたんですよ、こっちの気も知らないで。
なので、一時期ケンカみたいになってしまいました。
M・N(元看護師キャリアアドバイザー)
それ、実は結構聞きますよ。
ご主人が看護師さんのお仕事内容や就職の実態を知らず、就職活動をしてから初めて知る人が多いみたいですね。
内定をもらってご主人に報告した後に、ご主人に反対されて私が一緒にご主人を説得する方法を考えたこともあります。
准看護師(43歳):リハビリ特化型デイサービス勤務
結構あるんですね~。
私が今回のことで感じたのは若い時は将来どうなるかや、どうしたいかなんて分からない人が多いです。
でも、私みたいに実際にいざ就職しようと思った時に「選べない」というのは厳しいなと思いました。
お金を稼ぎたいとか、こんな看護がしたい、と思った時に自分が希望する職場を選びたいのであれば、ブランクはなるべく短いほうが良いですね。
あの時は主人の言いなりになってしまっていましたが、自分の人生ですし、できるできないは一旦置いておいて「ちゃんと主人に自分の気持ちを伝えなさいよ!」と当時の自分に言ってあげたいですね。
CASE2:ご主人の不倫が発覚。「仕事のことや自分の気持ちをしっかり話しておけば、離婚しなくて済んだかもしれません。」
正看護師(47歳):特別養護老人ホーム勤務
私、仕事がすごく好きなんです。
新卒で地元の総合病院に就職し、院内でも一番忙しいと噂の循環器と心臓血管外科の病棟で働いていました。
もちろん忙しかったのですが、やりがいも感じていました。
20代後半で同じ病院の人と結婚して、そのまま妊娠・出産。
育休を取らせてもらいすぐに復帰しました。
院内の託児所に子どもを預けて働いていて、自分の中では充実していたつもりだったのですが…
主人が同じ病院のナースと不倫してたんです…。
M・N(元看護師キャリアアドバイザー)
それはショックですね…。
正看護師(47歳):特別養護老人ホーム勤務
その時はすごくショックでした…。
それで、主人と話し合ったら「仕事をしすぎていて家庭をおろそかにしている」と言われました。
まぁ…たしかに家庭のことがおろそかになってしまっていた自覚はあったのですが、それに対して主人は何も言わなかったので、そんなに不満があるとは思いませんでした。
それで、主人は別の女性とお付き合いしていたことを謝ってくれたのですが、私がどうしても主人のしたことを許すことができずに離婚したんですよね。
M・N(元看護師キャリアアドバイザー)
なるほど…当時は忙しくて、お互いなかなかコミュニケーションが取れていなかったのでしょうか?
正看護師(47歳):特別養護老人ホーム勤務
そうですね…元主人も病院勤務ですし、すれ違いは多かったと思います。
離婚と同時に病院を辞めて今は特別養護老人ホームで働いていますが、もともと在宅看護に興味があったので病院で経験を積んだら30代半ばくらいで病院を辞めて介護施設で働こうかなと前から思っていたんですよね。
主人がそんなに不満を感じているのを知っていたら、さっさと総合病院を辞めて介護施設に転職していたでしょうし離婚せずに済んだかもしれません。
M・N(元看護師キャリアアドバイザー)
そうだったんですか…。
看護師さんって病院内で社内結婚する方も多いですよね。
そうなるとお互いがシフト制で夜勤があったりすると、なかなか一緒にいる時間がとれなかったのではないでしょうか…?
正看護師(47歳):特別養護老人ホーム勤務
そうなんですよ。2人とも3交代制だったので、同じ家にいるのに全然会わなかったですね。
普段のコミュニケーションもですが、仕事に対する考え方や子育てに対する考え方について自分の意見や価値観を伝えることもなければ、主人に聞くこともしなかったです。
他の職業に就いたことがないので何とも言えないのですが、看護師は不規則な生活なので普通の職業の人に比べたら、すれ違いが起きやすいのではないかなと思います。
だからこそ、意識してパートナーや家族とコミュニケーションを取っていかないといけないなという勉強になりました。
どちらもパートナーや家族とのコミュニケーション不足が原因で起こってしまった事例です。
実際に看護師と面談をしていて感じるのは仕事の悩みや家庭の悩み、そして「自分がこの先どのような生活を送りたいのか?」をパートナーや家族に話していない人が意外と多いということです。
看護師が仕事と家庭を両立するために、あなただけが我慢する必要はありません。
看護師として 仕事と家庭を両立しながら、自分がやりたいことを実現するには家族の理解や協力も必要になってきます。
だからこそ、常日頃からパートナーや家族とのコミュニケーションは大切にしていきましょう。